寝苦しい夏の日を想像してみましょう。例えば、気温28°Cの場合で、雨の日は汗がだらだらで寝苦しいのに、 晴れた日は、夜は涼しく感じられます。これは、湿度の違いによるものです。 気温28°Cで湿度90%と、気温28°Cで湿度60%以下とでは、同じ28°Cの気温でも暑さの感じ方が全然異なります。 これは潜熱と顕熱の関係で説明することができます。
たとえば、0°Cの水があるとします。これを100°Cまで温度を上げるための熱を顕熱と言います。 直接、温度計で測ることが出来る熱。直接、感じることが出来る熱のことです。
100°Cまで温度が上昇した水は、それ以上、温度は上昇しませんが今度は水蒸気となって蒸発していきます。 この様に蒸発の為に必要な熱量のことを潜熱といいます。顕熱と潜熱の関係は、氷でも同じことがいえます。 0°Cの氷が 0°Cの水に変化するには、0°Cの氷に80Kcal/kgの熱量が必要です。この熱量が潜熱といわれるものです。 潜熱とは、この様に氷から水へ、水から水蒸気へと物質の状態変化にのみ費やされる熱量のことをいいます。 人体への影響では、乾燥感や蒸し暑さとして感じられる湿気の事です。
今まで一般的に使用されてきたCal(カロリー)は「熱量」エネルギーを表すのに用いられて来ました。一方、J(ジュール)は,力や電気などのエネルギーをはじめ,すべてのエネルギーを表すのに使われる,世界共 通の単位です。我が国でもcal表示からSI単位であるJが基本表示単位になりました。
1cal=約4.2J、1J=約0.24cal
カロリーの定義。(cal表示は食品以外禁止)
●1cal=1gの水の温度を、1℃上げる(エネルギー=熱量)
エネルギー(cal)=質量(g)×上昇温度(℃)(水の場合)。
例)水100gを20℃上げるのに必要なエネルギーは質量(g)×上昇温度(℃)=100g×20℃=2000cal ということになります。Jに換算すると, 2000cal=2000×4.2=8400J です。
J(ジュール)の定義。
●1Jは1N(ニュートン)の力(102gの物体を支えるくらいの力)で,その力の向きにものを1m動かすのに必要なエネルギー
J(エネルギー)=N(力)×動かす距離(m)で計算
例)20Nの重力のはたらく箱(2kgくらいの箱)を1m持ち上げるのに必要なエネルギーは,
力(N)×持ち上げる高さ(m)=20N×1m=20J です。
JとW(ワット=仕事率)の関係。
●1Wは,1Jの仕事を1秒間でしたときの仕事率
W(仕事率)=J(エネルギー)÷時間(秒)
W=[J/秒]
例)20Jの仕事を1秒でするときの仕事率は,20J÷1(秒)=20(W)(Wは家電のワットと同じ)
20Jの仕事を20(秒)でするときの仕事率は,20J÷20(秒)=1(W)
W(仕事率)でJを定義。
●1Jは,1Wで1秒間仕事をしたときのエネルギー
エネルギー(J)=仕事率(W)×時間(秒)
例)20Wの仕事率で,1秒間仕事をしたとき発生したエネルギーは,20W×1(秒)=20J
家電に書いてあるW「消費電力」・「電力」は「1秒間に出すエネルギー(熱,光など)」のことで
[J/秒]、電力と仕事率は同じものなので同じ単位。
例)家電の表示(消費電力1200W)のポットは「1秒間に1200Jの電力量を使う」ことを表しています。このポットでお湯をわかすのに1分(=60秒)かかったとすると,その
潜熱といえば、何やら難しく感じられますが、物質の変化の状態に応じて様々に呼ばれます。 蒸発熱又は気化熱(水から水蒸気)・凝縮熱(水蒸気から水)・溶解熱(氷から水)・凝固熱(水から氷)
これらはみんな潜熱の別名です。
※( )内の説明は、H2Oの具体例で、他の物質についても同様に気体・ 液体・個体の状態変化に必要な熱量をそれぞれ同じ呼び方をします。
0℃の水10gを0℃の氷にするときに放出される熱量は?(水の比熱は4.2J/gK、氷の凝固熱は334J/g)この場合、比熱は温度上昇は0℃なので関係ありません。氷の凝固熱は334J/gということは、水1gが氷になるとき、334Jの熱を放出します。
計算式は{10g×334J/g=3340J=3.34×103J}となります。
除湿すると涼しくなる理由もまた、この顕熱と潜熱の関係で説明することができます。 人間は、体温を調整するために熱を発散させますが、このとき相対湿度が低ければ 温度は高くても汗として熱の発散(蒸発)が対流や輻射でスムーズに行われ、不快な感じがしません。 これが除湿による効果なのです。一方、温度は同じであっても相対湿度が高い場合には、 潜熱により熱の発散が鈍くなり、汗の発散(蒸発)がスムーズにいかないので不快な感じを受けるのです。
空気中に含まれる水分を除去し、低湿度にすることを減湿または除湿と言います。夏期の冷房時には、 高温多湿の空気が空気冷却器で急冷却される時に結露し、空気中の水分が水滴として分離され、 空気冷却器からドレン管により室外に排除されます。つまり空気冷却器が減湿器の役目も果たしているのです。 クーラーで除湿すると、涼しく感じるのは除湿によって水蒸気に含まれる潜熱が排除されるために 温度は変わらなくても涼しく感じるのです。