九州住環境研究会

設立の趣意

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九州住環境研究会は、九州地方の住宅のあり方を気候風土など九州特有の地域環境との関連で、根本から真摯に問い直すための研究会です。

九州の住環境は縄文・弥生時代より今日まで、様々な外来文化の影響を受けながらも連綿として伝えられてきました。

例えば、木造を主力構造として建築されてきた我が国の木造構造物は、世界遺産の法隆寺構等、世界一の長寿と奈良の大仏殿の様に世界一の大きさを誇っています。

我が国の住宅は、このような寺社仏閣ばかりではなく一般住宅においても、戦前までは、様々な地域的な特性に合わせて、地域的な木材や素材で建てられてきました。九州地方においても、茅葺き屋根の農家や土蔵造りの商家、周囲を座敷林が取り巻く農家、台風に備えた石造りのまわし塀のある民家、船の格納庫を備えた漁村の民家など地域の気候風土的な特性や自然災害の状況を明確に記憶した住宅が建てられてきたのです。


本来の我が国の住宅は、世界標準でも日本標準でもなく、いわば地域標準で建てられてきたというべきかも知れません。

しかし、今日の我が国の住宅建築の状況は戦後の復興期以来、このような地域的な特性を無視したいわゆる大手プレハブメーカーによるナショナルスタンダードとも言うべく、北から南までまるで「金太郎飴」のような、どこに行っても同じデザイン・同じ構造・同じ間取りの住宅が建つような状況になってしまいました。


戦後の荒廃の中から早急に劣悪な住宅事情を回復させるために、大手ビルダーが果たしてきた役割を否定するものではありませんが、本来の我が国の住文化のあり方を考えた場合、住宅をとりあえず供給するだけの任務は、今日、終焉に近いと言うべきかもしれません。

行政当局においても、住宅の大手ビルダーによる安易なナショナルスタンダード化は、特色のある地域文化としての住宅の住み良さを損なうばかりか、我が国の地方の職人文化が消滅していくことと同意義語になってしまっていることに気づき始めたようです。

住宅産業は地域的な職人の文化として裾野の広いものであります。地域の住宅建築文化の消滅は、地方の職人文化の消滅と共に、地域産業の荒廃にもつながるものです。


九州住環境研究会は、国土交通省が推進している「次世代省エネルギー基準評定」や「住宅品質確保法」等の住環境の性能面における真のナショナルスタンダードの創設の機運を受け、これを地域住環境創造のベーシックとして捉え、九州地域の工務店や大工職人さらには、一般建て主の皆様に、住宅に関する正しい情報を提供し、地域の優良な工務店と共に九州地域における新しいローカルスタンダードの確立を目指すことを目的にしています。

また、九州地域の皆様に地域の気候・風土における最も適切な住宅建築工法および、住環境の創り方、住まい方等を啓蒙し、九州における住文化の新たなる創造を目指すものです。 従って、九州住環境研究会は、研究および活動の成果は全て一般に公開し、九州地域の気候・風土に最も適した住宅造りを支援し、将来に繋がる九州地方の個性的な地域住文化の礎を創り出すことを趣旨として設立されたものです。