九州住環境研究会

No.78 『住生活基本計画』から見える親子『近居』の勧め。
子供は親を心配し、親は子世代を心配している、でも同居は嫌、それなら近居はどうですか?
親世代も子世代も求めている安心・充実の為の「近居」生活。

2016年8月31日更新


今後10年間の国民生活の方向性について。

「住生活基本法」に基づき、国民生活の安定を確保するために今後10年間の方向性を示すものが「住生活基本計画」です。
今後の10年間の課題は以下の3点に要約できます。
①若年・子育て世帯や高齢者が安心して暮らすことができる住生活の実現。
②既存住宅の流通と空き家の利活用を促進し、住宅ストック活用型市場への転換を加速。
③住生活を支え、強い経済を実現する担い手としての住生活産業を活性化。
その実現のために3世代同居や近居を促す施策が新たな取り組みとして注目されています。

電力小売りの自由化で電気料金は下がるのか?

近居が求められている背景には、子育て世代の孤立や負担が大きくなっていることが挙げられます。大家族が普通だった昔は、子育ては家族全員の仕事でそれだけ、子育てを学ぶ機会もありましたが、現在では、夫婦2人だけでは、全く未経験の部分が多く、そのために子育て世代の孤立や負担が大きくなっていることが挙げられます。内閣府の調査では、約8割が祖父母(自分たちの父母)の育児や家事の手伝いが必要だと考えています。(図・1)

図1

出所:内閣府「家族と地域に於ける子育てに関する意識調査報告書」

子育て世代の親は、団塊の世代で同居を好まない。

今の子育て世代の親は、戦後初期に生まれた団塊世代で、大家族から解放されたアメリカ型とも言える核家族世代でプライバシーを重視し、自分らしい生活スタイルを選択する傾向があります。このような考え方から子世代が同居を求めても、親世帯だけの生活を求める場合が多いようです。
しかしながら身体の衰えや健康状態は、自分では気が付きにくく、突然発症する脳血管疾患等の重い病気や骨折などは、いつ起こるか分かりません。親世代のどちらかが亡くなった場合は、遠方で父母のどちらかが独居暮らしになるのですから、子世代には非常に気がかりです。
特に大災害が頻発している現代では、親世代と子世代が遠方に離れて暮らすことは、双方にとって、大きな心配の種になってしまいます。
最近、社会問題化している空き家の多くは、子供が遠方に移り住んだ後の親世帯の崩壊を表しています。国が既存住宅の流通と空き家の利活用を促進し、住宅ストック活用型市場への転換を加速するために、リフォームやリノベーションに対する補助金を拠出しているのも、100年以上の寿命を持つ高性能住宅に対する補助金、ZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)に対する補助金等を出して、高性能住宅の建築を奨励しているのも、住宅が欧米並みの長寿命・高性能があれば、故郷から遠方に移り住んだ子供達も退職後、故郷の親の家に帰ることが出来るからです。都会で退職した子供が、親の元に帰って来たくても、親の家が朽ち果てていたら折角の退職金で新築し、親の面倒と自分達の生活のために再び就職して働かなければなりません。逆に、親の住宅が二世帯が生活するのに充分な余裕があれば、話は全く逆になります。親は年金で自活でき、子世帯は退職金をそのまま、老後資金として温存することが可能になります。退職した子供世帯も年金給付までの短い間だけ働けば、比較的に余裕のある生活が可能になります。
この様に住宅性能が高い住宅・長寿命住宅が必要なのは、親の住宅を子供に引き渡してやることが出来るからです。国が目指す高性能住宅という社会資産の充実は、住宅という最も高い買い物を子世代は、リフォームなどで対応でき、老後負担に耐えられるという側面もあるのです。親世帯に余剰金があるのであれば、お金で残すよりも充実した住宅で残してやることが最も賢い方法になります。価値のある住宅であれば、流通させて同居後の親の生活資金に充てたり、親達の有料施設への入居の資金を捻出することも可能になるからです。

親の協力で共働きや子育てを支える。

親子が同地域に生活しているのであれば、夫婦共稼ぎが一般化している現在では、親世帯の助けがあれば、子供世帯は非常に助かります。
出生率が上がらない原因の一つは、育児問題で最近も話題になったように保育園などの施設が充実しないという問題です。都会では保育園は不足していますが、地域では、保育児童が少なくて保育園の経営が成り立たないという問題です。これでは国がいかに出生率を上げろと言っても環境的に無理があります。そこで注目されているのが、近居という方法です。
政府が本年6月に閣議決定した「ニッポン」一億総活躍プラン」では、出生率1・8%に向け「子育てを家族で支える三世代同居・近居しやすい環境作り」に取り組むことをも気宇表に掲げています。

子世代家族の住まい方は男女共に近居が理想

国土交通省の資料では、30代〜40代の男性の44%、女性の46%が近居を「理想の家族の住まい方」と考えているようです。

図2

出所:国土交通省「若年・子育て世帯、高齢者世帯の現状と論点

昔と現代の若い夫婦との考え方は、かなり変化してきています。それは、親世代のように兄弟、姉妹が多かった時代と今は子供達の考え方も様変わりしています。もしも子供夫婦が住宅を建てるのであれば、敷地があるならば完全別居で、敷地内に新居を建てさせたり、親世代と共同で二世帯住宅を新築を提案するなど、子供の将来、親の老後を見据えた計画的な住宅建設が重要になります。その様な場合には、松下孝建設にご相談頂ければ幸いに存じます。