2015年07月24日更新
今月初め、パナソニックは新エネルギーとして注目されている水素を光触媒技術を応用して、家庭で簡単に製造する技術を2030年までに実用化すると発表しました。今までの水素社会の青写真では、原油などと同じように、褐炭などの、安い原料からつくり出した水素を海外で調達する、という考え方でしたが、それをポスト、太陽光発電技術として、水素製造パネルを開発するというものです。
水を電気分解すれば、水素と酸素になることは中学の化学実験で習いますが、このような一般的な手法では、大量の電気を必要とするので、燃焼時に二酸化炭素を排出しなくても、水素を電気分解で製造する場合は、環境負荷を水素に置き換えただけの技術だと見られてきましたが、太陽光による光触媒で、直接水素が分解できれば、環境負荷ゼロの素晴らしいエネルギー源になります。
触媒は「ニオブ系窒化物触媒」で、太陽光発電の材料であるシリコンなどと比べて資源量も豊富、しかも水素をつくり出す方法もシンプルで、低コストが見込めると解説しています。
本年度から、NED(新エネルギー・産業技術総合開発機構)や京都大学と協同で、水素の発生高率を高める研究をスタートさせると言うことです。
最終ユーザーである川下の家庭で、水素を造り出すというところに大きな意味があります。
現在の水素利用技術は、燃料電池「エネファーム」ですが、エネファームは主に、天然ガスを改質して水素をつくり、お湯と電気をつくり出す仕組みですが、水素を直接使えるシステムにすれば、ガスを使用しない燃料電池も可能になります。パナソニックの水素製造パネルの他にも、本年度中に水素自動車の発売を開始するホンダでは、太陽光発電と「高圧水電解システム」で、水素をつくり水素自動車を家庭エネルギーの要に据える、変換技術を埼玉県庁で実験し、実証済みです。
ホンダの場合も、FCV(燃料自動車)で使われる水素を、 家庭でつくりますが、水素は天然に存在する物質ではなく、他の物質と結合した状態で存在するため、現在、水素をつくり出すためには、主に液化天然ガスの改質や、ガラス工場や製鉄時の副産物として生成された水素が使われています。
水素を製造する大型施設では、電気分解や褐炭などを燃料に、ガス化して水素を取り出す方法が一般的で、このような大量生産の場合は、水素そのもののクリーン性は、製造過程で帳消しになってしまいます。
パナソニックやホンダの技術が注目されるのは、太陽光を利用したクリーンな生産技術で、一般家庭で水素燃料の調達が可能な事が新しく、ホンダは、太陽光発電の電力で「高圧水電解システム」を稼働させて、水素をつくる方式ですが、製造時から貯蔵、供給までの全てのプロセスで二酸化炭素を排出させないシステムで、効率良く水素をつくり出し、家庭で電気と水素を自給するという考え方です。
新発売される、ホンダのFCVは、車体のフロント側に新たにインバーターボックスを追加して、交流100Vのコンセントを利用できるようにしている他、「9kWの出力を7時間連続で出力できる」能力があり、これは一般家庭が消費する電力の6日分に相当する電力量だという事です。
日本発の水素社会の扉は、確実に開かれようとしています。
下図はホンダが開発した水素発生装置ですが、?が従来の水電解装置(燃料電池)による水素製造プロセスで、?がホンダの「高圧水電解装置」による水素発生プロセスになります
2009年に、日本の石油・ガス各社が発売した「エネファーム」は、世界初の家庭用燃料電池(コージェネレーション・システム)でした。
都市ガスやLPガスなどから水素をつくり、燃料電池で発電し、さらに余熱で給湯まで賄うという優れもので、発売当初は330万円の設備が、現在は160万円になり、補助金が30万円で、実質130万円まで、低価格化が実現しています。
このように、すでに私たちの身の回りには燃料電池が活躍しています。燃料電池は、クリーンな水素エネルギーを使って電気をつくる、未来の水素社会の実現には欠かせないものと言われています。更に蓄電池の高性能・低価格化が、今後の水素社会の大きな追い風になりそうな勢いになっています。