2015年01月19日更新
1970~2010年の間に増加した温室効果ガス78%の排出増は工業生産過程の化石燃料の燃焼による二酸化炭素です。また、他のエネルギー源と比べて、二酸化炭素の排出量が多い石炭の使用量が価格的に安価なため増加しています。これは温暖化防止に逆行するもので、中国やインドなどでは目に見える形で環境汚染が進んでおり、石炭利用の規制も議論の対象となり得ます。我が国の場合も京都議定書の削減目標はかろうじて履行できたものの原発停止後は、排出量が大幅に増えていることが問題になっています。
過去100年で地球全体の平均気温は約0.85℃上昇し、このまま対策を取らないと、現在の温室効果ガス430ppmの(二酸化炭素換算濃度)は2030年には450ppmを超えてしまい、2100年には、750ppm~1300ppmまで到達して地球の平均気温は産業革命時と比べて3.7℃~4.8℃上昇する可能性が高く、致命的な状況になります。
平均気温が4℃以上、上昇すると穀物生産量の落ち込み、漁獲量の変化などが起き、世界的に食糧安全保障に重大な影響が出て人の移動や水、食糧資源を巡る紛争が起これば、それが引き金となって再び大戦に発展する可能性も指摘されています。2℃未満に抑えても、温暖化の悪影響が無くなるわけではなく、温暖化を抑える努力が必要で、温暖化で起きる現象に対する「対応」が必要です。「対応」とは海面上昇に備えて堤防を築いたり、異常気象に備えて早期警戒システムを構築するなどを指します。しかし、4℃以上の上昇が起きた場合には「対応」の限界を超える可能性が指摘されており、限界を超さない国際的な対策が今こそ必要です。
産業革命前に比べて、気温上昇を2℃未満に抑えるには、今世紀半ばまでに世界の温室効果ガスを2010年に比べて41~72%削減する必要があり、21世紀末に向けて、排出量をゼロかマイナスまで下げなければなりません。現在のペースの排出が2030年まで続けば、2℃未満に抑えることは益々困難になり、いま削減努力を怠れば後々、大幅な削減を強いられるだけでなく、新エネルギーの開発とCCS(炭素の回収・貯留)を組み合わせるなど、経験のない未知の技術開発が必要で大幅なコストアップが予測されます。
温室効果ガスの排出量を抑えるには「低炭素エネルギー」への切り替えや、排出量取引制度・炭素税などの温暖化政策、気候変動枠組条約やCOP議定書の批准などの国際協力が不可欠で、温暖化対策には二酸化炭素削減に伴う相乗的な便益も生まれ、石炭火力を再生可能エネルギーに切り替えれば、二酸化炭素排出量が減り、大気汚染物質も減り、人々の健康にも寄与できます。この様に必ずしもマイナス効果だけではありません。
気候変動枠組条約の国際交渉では、発展途上国も含めた全ての国が参加する、温暖化を抑えるための新しい国際的・法的な枠組みを作る話し合いが進められています。
2015年末にパリで開催されるCOP21(第21気候変動枠組条約締約国会議)で、合意を計り、2020年以降に実行に移すことになっています。
2020年までは、カンクン合意で、各国が自主的な目標や削減行動を国連に登録し、自主的に取り組むことが決まっていますが、第5次評価報告書でその内容を確認してみると、自主的な取り組みが登録どおりに実現したとしても、温室効果ガスの削減量は、2℃未満に抑えるには不足であることがわかります。今回の第5次評価報告書が示した厳しい現実を認識して各国ともカンクン合意で示した自主目標や削減行動を2020年までにより積極的で実行力のある行動に引き上げていくことが求められています。2020年以降の新しい枠組「産業革命よりも2℃未満に抑える」という国際公約をより実行力のあるもにしていく必要が有ります。