2014年04月24日更新
我が国の電気事業は1995年の改正電気事業法によって卸発電市場が自由化され、出力200万kWを超える発電設備を持つ企業は卸電気事業者としての規制を受けますが、その他のIPP(独立発電事業者)は卸供給事業者となり、事業許可なども原則として撤廃され新規参入が容易に成りました。
震災前はガス価格の上昇で導入が減っていましたが東日本大震災(2011年)以降、自衛のために自社で発電機を運用する企業が急速に増えてきました。
政府が導入費用の最大50%を補助する制度も導入の後押しとなり、また米国のシェルガスの開発成功でガスの価格低化の見込みも導入に拍車を掛けたようで、デベロッパーも自前の電源確保の好機と捉え、熱電併給(コージェネレーション)システムの発電容量が本年3月末で1000万kWを超えたことがコージェネ財団の集計で示されています。これは原子力発電所10基分に相当する量で、原子力発電の再稼働なしでも、夏場を乗り切れる電力量となっています。
熱電併給(コジェネレーション)とは、石油や天然ガスを燃焼させて発電を行う際、従来は大気中に放出していた排熱を回収して暖冷房や給湯に利用することができるシステムです。
そのエネルギー利用効率(省エネルギー性)は、現在80%程度を実現しています。
業界を統括しているコージェネ財団では、2030年までに3倍の3000万kWまで拡大すると試算しているようで、原発30基分の熱電併給発電が稼働することになります。
一般向けの熱電併給システムは『エネファーム』の名前で主にガス会社によって販売されており『エネファーム』は都市ガス用とLPガス用の2機種があります。『エネファーム」の年間販売台数は、昨年度は3万台を越え、価格は190万円と当初価格の半分程度になり、固体高分子形(PEFC)38万円、固体酸化物形(SOFC)43万円の応募期限付きの国の補助金が付いています。
熱電併給システムといっても従来は、ガスを燃焼させて蒸気タービンを回して発電する方式ですが、我が国では、火力発電所の立地条件から排熱の利用は無く、約40%の電力以外は排熱や送電ロスで60%のエネルギーが無駄になっていました。
企業の熱電併給システムはヨーロッパの様に発電所の排湯を活用するシステムが主ですが、『エネファーム』は、都市ガスやLPガスを原料として化学反応を起こして発生させた電気と熱を給湯に利用する、まったく新しい熱電併給システムです。熱を給湯に利用する、まったく新しい熱電併給システムです。
エネファームは、大きく分けると「燃料電池ユニット」「貯湯ユニット」「バックアップ熱源機」の3つで構成されています。発電の仕組みは、燃料電池ユニットの燃料電池スタックで、ガスから取り出した水素と空気中の酸素を化学反応させて発電します。発生した電気は、インバータで家庭用の交流に変換してから、分電盤で電力会社の電気と一緒になって使用されます。
発電時に生まれた熱は、熱回収装置が効率よくキャッチし貯湯タンクの水を加熱して、お風呂やキッチンなどで利用します。
バックアップ熱源機は、貯湯タンク内のお湯の温度が低い時などに稼動するほか、床暖房などに使う温水をつくります。
個体酸化物型(PEFC)は発電効率39%、有効排熱が56%と燃料ガスのエネルギーを約95%も利用できます。
個体酸化物型(SOFC)の場合は、発電効率46.5%と高効率で有効排熱が43.5%と約90%のエネルギー利用率を誇る優れもので、ガスで水素を作り空気中の酸素と反応させて電気とお湯を作り出します。
以前、太陽光発電の発電総量が原発2基分に達したことを紹介しましたが、商業用のコージェネレーションは、すでに原発10基分に達していることが、コージェネ財団から公表され、東日本大震災以来、企業の電力自衛策が国の電力政策の再検討を迫る勢いになっています。
資源小国の我が国では、原子力発電は効率やコストから、非常に使いやすいエネルギーとされてきましたが、現在の福島原発の廃炉も後40年は必要との見解が出されていますが、更にその先の最終処分場の決定もままならない現状では、全く先の見通しが立たないといっても過言ではないようです。
その間にも再生可能エネルギーは次々と成果をあげているようです。民生用のエネルギー消費は住宅性能の向上が貢献し、かなり省エネルギー化が進み、自動車もハイブリッドからEV(電気自動車)・水素自動車へと進化しています。
松下孝建設が取り組んできました、エアコン一台程度のエネルギーで暖冷房が制御できる住宅性能があれば、エネルギー購入の必要がない「自活エネルギー」の時代は目の前です。