2025年10月29日更新
住宅金融支援機構の2025年4月調査で、24年10月から25年3月に住宅ローンを新規に借りた人のうち、返済期限を35年以上に伸ばした人の割合は、約25%をしめたことが報告されています。背景には、今まで50年ローンを扱わなかったネット銀行が扱い始めたことにもあるようです。
50年ローンは、主に20代から30台前半の契約者を対象に、完済時の年齢80歳くらいまでを上限にして返済期間を最長50年にするローンです。住信SBIネット銀行が23年8月に取扱いを開始し、au自分銀行やpaypay銀行も導入を始め、住信SBIネット銀行の場合は、25年度の4〜9月の契約のうち、約3割の返済期限が35年以上だったようです。
住宅金融支援機構と民間金融機関が提携する固定金利商品にも最長50年の「フラット50」がありますが、25年4〜9月までの申請件数は、4118件と前年同期と比較すると4倍に増加しているようです。
支援機構の「個人営業企画部」の話では、「物件価格の上昇と今後の金利上昇を見据えた固定金利を選択する人の数が増えていることが影響している。」という見解を述べています。
従来は長期優良住宅が対象でしたが、今後は新基準のGXZEH(ジーエックス・ゼッチ)が開始されることから、省エネ基準等級6以上の高性能住宅が標準になる場合、住宅価格の上昇も考えられますから益々35年以上のローンの割合が増えてくるのかもしれません。
GXZEHの補助金などの様子がまだハッキリしていませんが長期ローンにも、弱点ばかりでなくメリットもあります。
例えば、8000万円を土地と住宅資金として借りた場合を想定すると「フラット35」の10月の最低金利は年1.89%。毎月返済額は約26.1円。「フラット50」の金利は年1.99%と金利は少し上昇するものの、毎月返済額は約21.1万円と低くなります。
さらに毎月返済額が低下すると金融機関は審査で「返済比率」を重視するので一定の金利での年間返済額を年収で割った数字で、35%などの上限を設けていますが返済額が減ることで返済比率が下がるので、銀行の担当者は「35年返済は、年収に対し7倍程度が借入限度だが、50年の場合は借り入れ限度が8倍、9倍になるケースもある」と解説しています。
ライフプランが変わりやすい若年層の場合は、目先の支払いを抑えて、柔軟に返済方法を考えられるのも利点になります。返済期間は借りた後も短縮は可能ですが、借り入れ後に返済期間を長くする変更はできません。
長期ローンは長い期間で返済していくために、ローン残高は減りにくく、その結果利息も膨らみ、返済総額は増えます。
8000万円を固定金利で借りる場合は、35年ローンの場合の総返済額は、約1億900万円ですが、50年の場合は、約1億2600万円になります。生涯年収のうち住宅に支払う額が増えると老後資金を圧迫する懸念が高まります。
29歳で住宅ローンを借りた場合の60歳時の残債は、35年返済では1200万円に対し、50年返済の場合は、約4000万円になります。
物価が上昇していけば、長期の方が断然有利と考える方も多いようですが、その通りにいかない場合を考えてコンサルタントのアドバイスは「定年時の残債は1000万円程度に抑えることが基本となります」ということです。
50年間の長丁場ですが、もしも余裕がある時には「繰上げ返済」はとても重要です。変動金利の場合は返済期間が長いと金利変動の影響が大きくなります。
「フラット50」なら金利の変更はありません。いずれにしても35年以上の長期金利で住宅ローンを考える場合は、必ず資金計画を綿密にする必要があります。
九州住環境研究会のアドバイザーを、あなたの資金計画にもお役立てください。