2011年10月25日更新
太陽光発電やスマートグリッド(次世代電力網)の効率的な運用にとって最も重要な技術である蓄電池技術の大幅な性能向上が「日本経済新聞」の一面に大きく掲載される時代になって参りました。スマートグリッド(smart grid)とは、簡単に説明しますと、コンピュータなどのデジタル機器による通信能力や演算能力を活用して電力需給を自律的に調整し、省エネとコスト削減、更に停電等を防ぐ信頼性の向上を目指した新しい電力網の事を言います。これはアメリカのオバマ大統領のグリーン・ニューデール政策によるもので、送電網の老朽化で停電が多く安定性を欠くアメリカの電力事情を一新させる政策として提唱されたものです。我が国の送電網は、停電が少なく世界でも最も信頼性が高い電力網で、災害復旧も早いことからオール電化住宅が主流になっています。我が国の場合は、二酸化炭素の削減を目標に、省エネルギー対策としてスマートグリッドが推進されているのです。
太陽光発電や風力発電など、新エネルギーによる発電設備は急速に増えていますが、天候や時間帯に発電量が左右され、安定的な電力供給が難しい側面があります。そのために蓄電池が不可欠だとされていました。現在、大規模風力発電設備にはナトリウム硫黄電池(NAS電池)が使われていますが、装置が大がかりで、細かな充放電には向かないため、住宅用として新たな蓄電池の開発が求められて来ました。また、トータルでのエネルギー使用量ゼロを目指す「ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)」等の実証実験と共にマイクログリッドという、身近な地域的な新エネルギーの供給実験も始まっています。
マイクログリッドとは、複数の小規模な発電施設で発電した電力を、その地域内で利用する仕組みのことで、分散型電源や分散型電力網とも呼ばれています。エネルギー供給源としては、太陽光発電、風力発電、バイオマス発電等の新エネルギーで行い、地域を既存の電力網から自立した条件で、これらの発電施設を地域内に作り、更にネットワーク化して連結。新エネルギーは一般的に出力が安定しないという欠点がありますが、複数の発電所を用い、電力需要にあわせて燃料電池や蓄電池によって最適制御を行うことで、需給バランスを調整し、安定的に電力を供給するもので、最も身近な電力供給源とするものです。スマートグリッドは、建設費用が安価で、送電によるエネルギーロスが少ないというメリットがあります。スマートシティとは、を活用しスマートグリッド技術を導入して電力供給の最適化を行い、太陽光発電・風 力発電等、再生可能エネルギーを用いた分散型発電システムや電気自動車の充電システム、高効率な空調装置を用いたビル・住宅などの都市システムが結合され、二酸化炭素排出量が少ない、環境負荷の低い社会インフラが整備されたスマートシティという次世代都市が生まれま す。そのエネルギーの自活のために最も望まれているものが、蓄電池の高効率化と長寿命化でした。
トヨタと東京工業大学は、従来のリチウムイオン電池並みの大電流を出せる、安全性の高い「全個体電池」で連続走行距離を現行小型車種の約200㎞から1000㎞程度までのばせる可能性があり、住宅用に使う場合も小型化しやすいと言い、新電池は、2015年~20年の実用化を目指しています。NED(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の蓄電池、技術開発ロードマップでは、EV向け次世代蓄電池で価格的には、現在の5分の1~10分の1以下になることが想定されています。マツダと広島大学は、EVの連続走行距離を2倍以上にする技術を開発。NECは、電極の新素材の開発で低価格、長寿命の蓄電池を開発。寿命を20年にのばし、5年後の実用化を目指しています。スマートグリッドやスマートハウス向けにも、富士通や日本IBMは、仙台エコタウン構造や福島スマートシティ計画などの実用化プランで我が国の新 エネルギー構造は、原発事故を挟んで世界に先駆け、本格的な段階に入りつつあるようです。
スマートグリッドやマイクログリッド、スマートシティについて述べて参りましたが、蓄電池の急速な高性能化によって、NED(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の技術開発ロードマップも書き換えられようとしています。自活エネルギー時代は、ほぼ5年以内に実現する技術となっています。この、今だからこそ必要な住宅技術、それは住宅の高性能化技術です。給湯器や効率エアコン等の設備機器とのネットでの高性能化ではなく、住宅そのものの高性能化が重要です。松下孝建設が目指す住宅高性能化は、本物の0エネルギー住宅で、その取り組みは既に始まっています。