2023年4月27日更新
国土交通省は市場の取引価格をもとにした「住宅評価モデル」の作成を公表しました。全国各地の取引データを分析することで、対象の土地、建物構造、床面積、立地場所などを入力すれば、即座に価格を推定できる手法を想定しています。
米国では「フレディマック」(連邦住宅貸付抵当公社)の評価モデルを活用して,金融機関が既存住宅の担保評価を算定しています。全米50州を対象に約一億件の不動産記録を分析し、秒単位で価格を算定できるため住宅ローン手続きの簡素化に役立っています。
国土交通省は日本版の「フレディマック」評価を開発しようとしています。省エネ改修などで住宅の品質が向上した場合にその価値が適正に上乗せされる仕組みも考慮し、既存住宅の「建築行為を伴わない認定制度の創設」等と共に、既存住宅の住宅評価の新時代が始まります。
国によって評価が決められる「固定資産税額」は客観的な資産価値の指標となるもので「固定資産税」は「土地」と「建物」それぞれの「固定資産税評価額」から算出して合算されますが「課税対象」の価格ですから不動産の「相場価格」(実際の購入価格)よりも低く評価されるのが一般的です。
耐用年数」を超えた建物には「資産価値」がないと判断されることが多く「一戸建て(木造)は20年で価値がなくなる」といわれるのは、このためで戦後の住宅は実際に「耐用年数」に準じた住宅だったのです。
最近までヨーロッパの日本家屋の評価は「ウサギ小屋」でした。
「耐用年数」とはあくまでも税金の算出に使用されるもので「耐用年数」が過ぎたからといって住まいとしての価値が完全になくなるわけではありません。
経年による最終残価率(下限)が20%に定められているため「耐用年数」を超えても「家屋の評価額」および「固定資産税」もゼロにはなりません。
日本の住宅がこのように世界から掛け離れた低性能住宅に成り下がったのは、主要都市のほとんどが焼け野原になった戦後からです。我が国では、戦後の70年の間、フル回転で住宅が建てられてきました。大手ビルダーの多くが戦後復興の只中に生まれました。大企業は、社員の住宅確保のために「営繕会社」を経営し、木材の不足していた時代に「軽量鉄骨(アメリカのスチールハウス)」を全国規模で建てまくり、現在もその名残で軽量鉄骨のスチールハウスを建てていることも日本の住宅が短命な一因になっています。
江戸時代や昭和初期までに建てられた古民家は現在も外国人の手で「リノベーション」(修復・再生)される等、世界的に人気があります。戦災に会わなかった京都の町屋などは、ヨーロッパの住宅と比較しても引けを取りません。これらの住宅は全て「100年を優に越した」江戸時代からの建物です。
地方にも古い歴史を持つ、伝統的な建造物が残っていますが、日本建築は「木と紙で出来た粗末なもの」という印象はありません。
本来の日本建築は欧米人もあこがれるほどの堅牢さがあり、特に京都の町屋は、欧米の長寿命住宅と同じように、四季の快適性が計算され尽くした建物です。日本の江戸時代や昭和初期までに建てられた古民家は、外国人等の手で「リノベーション」(修復・再生)されて、世界的に人気があります。
住宅市場に占める中古住宅の割合は、日本では15%に止まるのに対し、米国では80%、イギリスでは89%が中古住宅ということは、米国では新築が20%、イギリスでは18%しかなく、日本では85%が新築です。これは恥ずべき事に日本の住宅が「社会資本」たりえないということです。
これからは流通に耐える長寿命・高性能住宅が子や孫の資産になります。欧米に比較すると市場拡大の余地は非常に大きく、高齢化で増加する空き家問題の解決にも、中古住宅の活性化は役立つと共に子育て世代などが優良な中古住宅を売買しやすい環境を整える事も急務となっています。
近年では生活様式や嗜好に応じて、断熱性能を改善する省エネ改修や大規模改修(リノベーション)も増えています。築年数の判断だけではこうした住宅の価値を反映できず中古住宅のローン承認を滞らせる原因になっています。
国土交通省は令和5年度中に金融機関向けの評価モデルをまとめて銀行などに活用を促す予定です。
ようやく日本にも、高性能住宅を公平に評価できる「住宅評価システム」が誕生します。100年の寿命を持つ住宅は適正に評価されます。
欧米のように住宅そのものが社会資本としていつまでも地域に愛されて住まい次がれる時代が来ました。
九州住環境研究会は今後とも地域に残る住宅建築を心がけて参ります。