九州住環境研究会

No.179 「相続土地国庫帰属制度」が始まる?
空き家や所有者不明の土地の増加を抑える対策として打ち出された関連対策。
2021年に成立した不要な相続土地の所有権を国に移転できる制度!

2022年7月26日更新

「相続土地国庫帰属制度」とは、どんな制度なのか!

2021年4月に成立した法律で、相続等によって土地の所有権を取得した者が、法務大臣の承認を受けて、その土地の所有権を手放して、国庫に帰属させることができる制度です。令和3年12月14日の閣議において、施行日が2023年4月に決定しました。この法律は簡単に言うと「相続した不要な土地の所有権を国に返すことができる制度」です。

今までは相続放棄などで行われてきた制度をより簡単に可能にする制度といえるかもしれません。国土交通省が空き家所有世帯を対象に物件の取得方法を調査した結果「相続」との回答が54.6%と過半数を占めた事から始まり、この制度の特徴は申請できる対象者が幅広いことで、しかも過去にさかのぼることが出来、例えば50年前に相続した場合でも利用できることです。

また、相続に伴って不動産の所有者名義を被相続人から相続人に書き換える「相続登記」をすませていなくても申請することが可能ですが、この場合は、申請時に相続を証明する書類の添付が求められます。

土地の所有者が、自らが買い取った土地でないこと。

制度の利用は相続又は遺贈(相続人に対する遺贈に限る)によりその土地の所有権を取得した人に限られます。つまり、売買などで自ら積極的に取得した土地については、この制度の対象外です。

土地を数人で共有して所有している場合には、共有者の全員が共同して申請する必要があります。共有の場合、所有者の中には、相続等以外の原因でその持分を取得した人が含まれている場合があります。この場合には、相続等により持分を取得した人と共同すれば、この申請を行うことが可能です。

例えば、AとBが共同してある土地を購入しましたがほどなくして、Aが死亡し、その土地の持分は相続人であるCが引き継ぎました。Aの相続を機に、BとCは共同して所有権を国庫に帰属させるための申請を行うことにしました。
この場合、Bの取得原因は相続等以外(売買)ですが、相続等で取得したCと共同して申請をするため、Bについても申請することが可能というわけです。

要件は簡単にまとめると「抵当権等の設定や争いがなく、建物もない更地」ということになります。通常の管理や維持に必要以上の費用や労力がかかる面倒な土地はお断りというわけです。

次に上げる10項目のいずれ該当しないことが要件です。

①建物がある土地
②担保権または使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地
③通路など他人によって使用されている土地
④土壌汚染対策法に規定する特定有害物質で汚染されている土地
⑤境界があきらかでない土地、その他所有権の存否、帰属や範囲に争いのある土地
⑥崖のある土地など、通常の管理にあたり過分の費用又は労力を要する土地
⑦工作物や樹木、車両などが地上にある土地
⑧除去が必要なものが地下にある土地
⑨隣接する土地の所有者などと争訟をしなければ使えない土地
⑩その他、管理や処分をするにあたり過分の費用又は労力がかかる土地

「相続土地国庫帰属法」に伴う費用・審査手数料は?

審査手数料について、詳しいことはまだわかっていません。実際に承認を受けた場合には、10年分の土地管理費用相当額の負担金の納入が必要になります。この負担金は、土地の地目や面積、周辺の環境など、実情に応じて算出するとされていますが、詳細は明らかになっていません。参考までに現状の国有地の標準的な管理費用(10年分)は、以下の通りです。

●市街地200㎡の宅地:約80万円
●粗放的な管理で足りる原野:約20万円
管理費用には、柵や看板を設置するための費用、草刈りや巡回のための費用が含まれいます。
具体的な手続きの流れについてはこれからですが、要件を全て満たしていた場合、法務大臣から承認の通知がされます。
ちなみに、以下に該当する場合には、申請は却下されます。
●承認申請の権限のない人からの申請の場合
●要件に該当しない土地、申請書や添付書類、負担金の規定に違反している場合
●事実の調査に協力しない場合
承認の通知を受けてから30日以内に納入しない場合には、承認の効力は失われますので、注意が必要です。

[国庫帰属]
土地の所有権は、申請者が負担金を納付した時点で国庫に移転するものとされています。

[承認の取消・損害賠償請求]
申請の内容に偽りがあった場合や、不正をした場合には、当然に承認は取り消されます。

来年春から開始される「相続土地国庫帰属法」の開始で、ようやく遅れていた放棄住宅や放棄土地問題も着々と解決に向かって行くことでしょう。長らく皆様を悩ませた、木材の高騰も平常値に戻りつつあります。低金利時代も本年で終了する気配が濃厚です。もしも新築計画をお持ちでしたら、早めに史幸工務店にご相談ください。今ならまだ、手立てが考えられます。