2021年11月30日更新
自民・公明の与党は、12月に税制改正大綱を決定する予定で支払う利息額よりも控除額の方が多くなる場合がある住宅ローン控除について見直しを行う見通しです。控除額や控除率のある方を是正し、具体的には「1年間に実際に支払った金利か1%のどちらか低い方を控除率として適用する」など複数の案が対象になっているようです。
新しいルールの適用は早ければ「2022年4月から適用するのか、すでに住宅ローン控除を受けている人に適用するか」と共に今後詰められる予定です。
政府税制調査会の土井丈朗委員(慶応大学教授)は「住宅ローンの返済計画に影響するため考慮すべき点が多く、適用は難しいのではないか」という見方を示しています。
会計検査院は19年住宅ローン控除について「必要がないのに住宅ローンを組んだり、控除の適用期間が終了するまで繰り上げ返済をしない動機づけに成ったりすることがある」と指摘し、見直しを提言しています。
会計検査院の調査では17年に控除の適用を始めた、1748人の内、1%未満の金利で借り入れた人が約78%に達し、与党も昨年の12月にまとめた税制改正大綱で、22年度税制改正の際に見直す考えを示しています。
歴史的な低金利で毎月の返済負担が軽くなっているのに加え住宅価格の上昇を受けて、家を売却してもローンが残る懸念が薄らいでいる為で、住宅ローン控除を利用すると「控除額が利払い額を上回るケース」もある事が大きいようです。しかし家計に余裕が乏しい状態でローンを組めば、返済に行き詰まるリスクもあります。
リクルートが2020年に首都圏の新築分譲一戸建て住宅を購入した人に自己資金の金額を聞いたところ、「ゼロ」と回答した人が25%を超えていたと言うことで「4人に1人」が頭金無しで住宅を購入していることがわかりました。
新築マンションの場合は「頭金0%」の割合は16%、「頭金5%未満」「5〜10%未満」と合計すると頭金1割未満の人は55%と過半数を占めています。物件価格の上昇で、頭金の割合が押し下げられた面も大きく影響しているようです。
日銀の大規模金融緩和政策と銀行間の競争激化で適用される金利の低下が進み、11月の変動金利はメガバンクで0.4%前後と、この10年で半分程度になっています。専門家は「高額物件でも毎月の返済額が現在住んでいる賃貸住宅の家賃とあまり変わらない金額になっており、負担が少ないと考えて、頭金無しで購入するケースが多くなっている」と話しています。
図・2は、5000万円を期間35年、年0.5%の変動型(元利均等返済)金利が上昇する場合の「シミュレーション」です。金利が毎年0.1%上昇すると返済額は、当初の13万円から6年目以降は約14.1万円、11年目以降は約15.1万円になります
一般的な変動型(元利均等返済)は金利が上昇しても毎月の返済額を5年間据え置く「5年ルール」、5年後に上げる際には25%増までとする「125%ルール」があり、毎月の返済額が急増する心配は少なく、注意しなければならないのは完済までの総返済額です。
当初は、約5500万円ですが、5年目には5783万円、10年目は6109万円と増えます。元利均等返済の毎月返済額は一定で元金返済額と利払い額の合計額。
金利が上がると毎月の返済額に占める利息の支払い割合が増え元金の割合が減り、元金の返済ペースが遅れる分、総返済額が増えます。25年経過時点では、6552万円になります。年0.2%の場合は、更に増えます。金利が急上昇し「5年ルール」「125%ルール」の毎月返済額では、期間内に完済できない場合は、最後に一括返済が求められます。
「変動型を頭金無しで借りる場合は、手元資金に余裕があり、金利上昇時に対応できる事が条件になります。
リスク管理にも、九州住環境研究会は最善のアドバイスを致します。