九州住環境研究会

No.213 住宅ローン残高、過去最高216兆円。
一見すると合理的にも見えますが、過度な借り入れや返済の遅れは、老後に響く恐れがあります。
減税などの影響で返済を急がない傾向が強まり、住宅ローン残高が膨らんでいます。

2023年12月28日更新

子供が多い世帯のフラット35最大1%金利引き下げを発表。

住宅金融支援機構の調査では 住宅ローン残高は2022年度 に過去最高の約216兆円に達したと報告されています。専門家の話では、主因は、金融よりも「住宅価格の高騰」によるものとされています。全国の指標となる東京区の新築マンションの平均価格が年6月で1億円を越えるなど、一般住宅を含めて住宅価格は急ピッチで上昇しています。

円安による住宅資材の高騰と原油価格の上昇で化学製品の値上げや温暖化による自然災害のため木材資源の不足によるが高騰など、様々な要因による「住宅価格の高騰」が住宅ローン残高を膨らませているようです。金融アナリストは、住宅建築費の頭金無しや、住宅価格の1割以下が主流になっていることも影響していると見ているようです。

以前は住宅価格の2割が頭金の目安とされてきましたが歴史的な低金利で、頭金を極力抑える動きが広まり、例えば、同じ5000万円の住宅の場合でも、頭金2割の場合は、4000万円のローンで済みますが、頭金ゼロの場合は当然。住宅取得の金額の全額ローンになるのは必然です。

住宅価格が高騰し、頭金も少なければ膨らむのは当然。

しかしながら、住宅金融支援機構の調査では、残高は過去最高を更新する一方、毎年度の新規貸出額は約20兆円であまり変化していないのです。
90年代は36兆円も越えたこともありますから、急増まではいえない金額だといえます。
90年代半ばから2000年代はおおむね20兆円を越えた返済額が昨今では、15兆円に減っていますので 多く借りる割には返す額が少ない、むしろ「貸し渋り状態」で新規貸出額が大きく増えなくても残高は膨らんでいる状態です。

なぜ、このような状態になるのか金融アナリストは、金利が低下し、住宅ローン減税との関係で早期返還のモチベーションが薄れていると分析しています。
ローン減税は年末残高などに一定の控除率をかけた金額を税額控除するので、控除率よりも低い金利でローンを借りると計算上は払う利息よりも控除額が大きくなって得をする計算になります。お金を借りた人がメリットを得る「マイナス金利」の仕組みで、減税期間中は多く借りている方がメリットが大きくなります。この結果繰り上げ返済をしようという意識の人が、以前よりも少なくなっているようです。

会計検査院はこのような状況を問題視し、22年度に控除率を1%から0.7%に引き下げたのですが、それでもまだ控除率よりも金利が低い状態が一部残存しているようです。ただ、このような「急がない」状態が、本当に家計状況に反映されているのか一考の余地があるとしています。

多くを借りて返済を急がない結果、高齢期に多額のローンが残る懸念もあり、総務省の調査では、住宅土地関連の負債がある家庭で、世帯主50代の場合、22年度で1067万円と6年連続で1000万円を超え、その上の世代も600万円前後で推移しています。

米国では9割が「長期固定型ローン」を選択。

住宅金融支援機構の調査によると最近は、約7割の利用者が変動型を選択し、現在の物価上昇が続く中、日銀の政策転換による、金融緩和策が本格的に実施された場合、金利の上昇は避けられない現実として差し迫っています。しかし、多くの金融機関は返済額を急造させないためのルールを持っています。

例えば、金利が上昇しても5年間は毎月返済額が変わらない。返済額が増えるとき、新しい返済額の上限を従来の25%増以上にしない。などのルールです。この様な金融ルールの存在を考えると、日銀の政策転換を過剰に不安視する必要は無いようです。金融機関のルールは、金融上昇に対応する時間的な余裕を与えると共に、元本の返済が長期化する原因にもなるので、万一に備えて手元資金を少しずつ厚くするということも考えておく必要があります。

これから住宅の新築をお考えの場合は、このような住宅融資の問題から、住宅の性能など様々な問題をパーフェクトに解決していくことが重要です。問題に行き詰まる前に、九州住環境研究会にご相談下さい。必ず最良の結果でお応えいたします。