九州住環境研究会

No.191 長期固定金利「フラット35」が選択肢?
欧米のインフレ抑止の「高金利政策」で、我が国の「低金利政策」にも変化の証が見えてきています。
昨年12月の日銀の金融政策修正で、大手銀行は住宅ローン金利を引き上げました。

2023年1月26日更新

住宅ローン金利が、上昇傾向にあるのは間違いない事実?

2013年3月に就任し、在任期間が歴代最長となっている日銀の黒田総裁は「アベノミクス」を異次元の金融緩和政策で支えて来ましたが、岸田総理は再任の考えはないということで2023年4月8日で任期切れとなります。2012年12月の第2次安倍政権で、安倍首相が表明し、今日では評価が分かれる「アベノミクス」とは「3本の矢」を柱とする経済政策のことです。

経済回復を最大目標と位置づけ、①大胆な金融政策(デフレ脱却を目指し、2%のインフレ目標が達成できるまで無期限の金融の量的緩和を行うこと)、②機動的な財政出動(東日本大震災からの復興、安全性向上や地域活性化、再生医療の実用化支援などに充てるため、大規模な予算編成を行うこと)、③民間投資を喚起する成長戦略(成長産業や雇用の創出を目指し、各種規制緩和を行い投資を誘引すること)、という3本の矢によって、日本経済を立て直そうという計画でした。

デフレ脱却に向け、2%の物価上昇を目標としてこれまで9年半、大規模な金融緩和を続けてきましたが、こうした中、消費者物価指数は原材料価格の高騰の影響で、ことし4月以降、5か月連続で目標の2%を上回っていますが、黒田総裁は、賃金の上昇を伴っておらず日銀が目指す形とは異なるとして、景気を下支えして賃上げを後押しするためにも金融緩和を続けることが必要だとしてきました。

世界の趨勢と異なる異次元緩和は、日本の国力をそぐ結果に?

一方で、欧米がインフレを抑え込もうと金融引き締めを加速させる中、政策の方向性の違いから急速に円安が進んで昨年9月には政府・日銀が24年ぶりにドル売り円買いの市場介入に踏み切りました。

金融緩和を続ければ一段と円安が進み輸入原材料の価格上昇に拍車をかけることになり金融引き締めに転じれば景気を冷え込ませるリスクがあり八方ふさがりの中、黒田総裁は昨年9月の記者会見で「当面、金利を引き上げることはない」と強調したうえで、物価目標の達成は来年も再来年も難しい状況だとして、賃金の上昇を伴わなければ物価目標の達成には時間がかかるという認識を示していました。

日銀の異次元緩和の修正で、長期の固定金利が上昇?

 日銀は昨年末の金融政策決定会合で、大規模緩和を修正する方針を決めて0.25%程度としてきた長期金利の変動許容幅を0.5%に拡大しました。日銀は「こうした状況が続けば企業の起債など金融環境に悪影響を及ぼす」として、長期金利の許容幅の拡大と共に、長期国債の購入額をより弾力的に決められるように変更し、10年物国債の利回りも0.5%に引き上げました。

日銀は円安は日本経済にプラスとの立場を示していましたが、益々、円安傾向が進み、為替相場の急激な変動が企業活動に及ぼす負の影響も無視できなくなり、足元の消費者物価の上昇率は4%に達し、政府・日銀が定める2%の物価安定目標を上回って推移しています。

円安が資源高に拍車をかけ、電力料金や生鮮品など幅広い品目で値上げが進む構図が鮮明になり、事実上の利上げに踏み切ることで、海外との金利差が縮小し、為替相場の急激な変動を抑える効果も期待されましたが、為替相場は対ドル相場で、現在130円程度で推移しています。

このような状況下での住宅ローンの選択とは?

住宅ローンには、変動型と固定型があります。変動型は金融状況に合わせて半年ごとに金利の見直しが行われます。

今までのような低金利が見通せる時代には変動型が有利でしたが、インフレ基調に時代が振れると、多少金利は高くても全期間金利が変わらない固定型が有利になります。また、時代の先を見通して変動型から固定型に変更している借り主も多くなっています。

全期間固定型住宅ローンには、金融機関の商品と「住宅金融支援機関」の「フラット35」があります。金融機関のローンは、預金者の預金を融資しますが「フラット35」は、融資は金融機関を通じて行われますが、融資した元金と利息を請求する債権は「住宅金融支援機構」が買い取る形になります。

これは金融機関が直接融資した場合、金利の固定化が金利リスクを抱える事になるからで「フラット35」は、債権を証券化し、投資家に販売し資金を調達しているので、金利水準を直接融資よりも押さえやすくなっています。これをMBS(資産担保証券)と言います。

MBSは着実な利回りが期待できる商品として一定の需要があり、住宅ローンの借り手の元利金は「住宅金融支援機構」が保証しますから、投資家にも安全な投資になります。

金融機関のローンと「フラット35」のどちらを選ぶべきか?

「フラット35」は全期間利息固定型のみです。民間ローンはその時々の金利で融資が行われますから、金利が安いときには「フラット35」よりも有利です。民間のローンでは、審査で雇用形態・勤務年数が重視されますが「フラット35」の場合は、建物が債券化されますから勤務年数が1年未満でも申し込めます。

さらに対象の住宅が床面積や耐久性、断熱性等の基準を満たしている場合、金利が下がります。「フラット35」の金利は、MBSの利率と金融機関の手数料を上乗せして決定し、金融機関によって利率は異なりますが、本年1月の最も多い利率は年1.68%(返済期間21年以上、融資率9割以下)です。新築をご希望の皆様は、資金計画から建築まで九州住環境研究会にご用命賜りますようご案内致します。