2019年1月21日更新
昨年12月にポーランドで開催されていたCOP24(第24回国連気候変動枠組条約締結国会議)が「パリ協定」を運用する実施指針を採択して閉幕しました。この会議は、米国がCOPから抜けた後の温暖化対策の行方を占う、最も重要な会議であるため、参加国は各国とも固唾をのんで、参加していましたが、先進国が途上国に対して行う資金援助や削減目標を巡って、対立しましたが、最終段階で先進国と途上国が折り合い、昨年のパリ協定は、2020年から適用されることになりました。
この合意の最も大きな意義は、米国を除く参加国180ヶ国の全てが参加することで、先進国と途上国のいわゆる二分論が解消したことと、各国が削減目標の上積みでも合意し、話し合いのテーブルに着いたことです。
2020年から適用が始まる地球温暖化防止の国際的な枠組みは、2015年にパリで開催された第21回国連気候変動枠組条約締結国会議で合意し、2016年11月に発行しました。
参加、180ヶ国が批准しましたが、米国のトランプ政権が翌年に離脱を表明し、国際的な温暖化対策の気運は一気に萎んでしまいました。
パリ協定は、当時のオバマ大統領と中国の習近平政権という2大排出国が採択後、1年足らずの条約発効というスピード発行を主導し、温暖化対策の世界的な熱意の高まりをトランプ新大統領が2017年6月に離脱を表明しました。これに対し米国の各州は、州単位での参加を表明しましたが、今回の実施指針のまとまりで、パリ協定破綻の危機は、一応回避されました。
しかし世界第2位の排出大国米国が参加しなければ温暖化対策の実効性を確保するのは難しいところですが、この会議に参加していた米国のガーバー国務次官補代行は「条約の公平性を重視する」と、積極的に発言し、中国などを念頭に先進国と途上国も共通のルールで削減を進める事になりました。
離脱表明をした米国が積極的に交渉に関わるのは、トランプ後を見据えているためで、2年後の大統領選挙で再任された場合は、復帰は難しくなりますが、再任しなかった場合、中国などに有利な条件での復帰は避けたいという思惑があるようです。
パリ協定では各国が自主的に温暖化ガスの排出削減目標を作成することになっていますが、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、パリ協定の産業革命よりも「2℃目標」は、現在の各国の取り組みでは「3℃」以上になると警告しています。
中国を含む途上国には、温暖化は先進国によって引き起こされたという考えが強いのですが、現在、世界で最も排出量が大きい中国をはじめとする、途上国が本気にならないと、温暖化の解消は不可能になります。
中国やインドなどの途上国と比較して、我が国もまた高い排出量で、東北大震災以来、原子力に変わり、石炭火力に頼る現状と途上国に多額の融資をして石炭火力発電を輸出している現状は、いかに効率的な石炭火力技術でも、世界に逆行する動きとして批判を浴びています。
パリ協定の前進となる京都議定書では、先進国のみに温暖化ガスの排出削減義務を課していましたが、パリ協定では、排出が急増する途上国も参加し、全ての国が削減目標を公表する仕組みを採用、温暖化防止の実行効果を高めています。
各国の削減目標を積み上げて、世界の平均気温の上昇を産業革命以前に比べて2℃未満に抑えることを目指します。更に1.5℃以下にすることも努力目標とすることで一致しました。COP24では、パリ協定を20年から適用するために実施指針について、確実に合意する必要がありました。指針には各国が公表する削減目標のあり方や期限、途上国への資金支援を行う仕組みなどが盛り込まれています。ただ、一部の指針は決着が先送りされて来年のチリで開かれるCOP25での合意を目指しています。米国を除いた180ヶ国が合意した背景には、現実に温暖化の被害が目に見えるように増えているからです。今我々に出来る事は、家庭からの温暖化ガスの排出量を極力少なくすることで、そのためには住宅の高性能化が最も重要です。ZEHも太陽光パネルが安価になり、無理しなくても手に入る時代になってきました。アメリカのトランプ大統領を責めるよりも我々もまた、身近なところから我々に出来る温暖化対策が重要になります。