九州住環境研究会

No.70 原発、廃棄物50m地下に10万年間貯蔵!
高レベル廃棄物は、300mの地下に、10万年間の貯蔵が必要です。
資源小国日本の原発は、一定の成果を称えつつも、代替エネルギーにバトンタッチの時。

2015年10月27日更新


原発の廃棄物は10万年の保管が必要という現実!

皆さんは、想像できるでしょうか?10万年という途方もなく長い時間、この10万年という時間が大きな課題となっています。「高レベル放射能廃棄物」の処分基準に先駆けて「低レベル放射性廃棄物」の処分基準を原子力規制委員会が、本年度中にまとめることになっています。その新聞記事に、10万年の保管期間という文字を見つけ、愕然としました。「高レベル放射性廃棄物」は、人が近づけば20秒で死ぬ程、強い放射能を安全レベルになるまで、10万年という途方もない時間、保管を要すると言うのです。今までは、地下深くに埋めて人間社会から隔離する地層処分が国の方針となってきました。しかし、東日本大震災は原発事故のリスクに加え、地層処分にも大きなリスクが有ることを浮かび上がらせました。 現在、高レベル放射性廃棄物の多くは青森県六ヶ所村に集められ、貯蔵方針や最終処分場が決まるまで一時保管していますが、すでに六カ所村には、収納可能量とされる量の8倍もの核廃棄物が集積されています。

発電に使われた核燃料の1億倍以上に増える放射能。

放射性廃棄物は原発で使い終わった設備品や使用済み核燃料から生まれます。日本では、MOX燃料という、使用済み核燃料を再び燃料として使用する高速増殖炉「もんじゅ」が開発されていますが、現在は稼働しておらず、青森県大間に「もんじゅ」に変わる新型原子炉が建設中です。燃料リサイクルが完成しても、燃料の再処理の課程で極めて強い放射能を持つ廃液が出てしまいます。この廃液に高温で溶かしたガラスを混ぜガラス固化体にしてステンレス製の容器で保管します。発電に使われた核燃料の放射能は使用前の1億倍に増えており、ガラス固化体にしても、人が近づけば20秒で死亡するほど危険です。
原料のウラン鉱石と同レベルまで放射能が低下するには、10万年もの歳月を必要とします。そのため日本では、地下300メートルより深い地層に埋め込む、地層処分という方法が国の方針となって来ました。地層処分のための研究が、岐阜県瑞浪市で進められています。高レベル放射性廃棄物は、鋼鉄製の容器などで覆われ岩盤の中に埋められます。年月とともに容器の腐食が進みますが漏れ出すまで1000年は耐えられるとしています。その後、廃棄物は地下水によって運ばれる可能性があります。しかし、岩盤の中の流れは緩やかなため地表に到達するには、数万年以降で、そのころには放射能は安全なレベルに下がっていると試算してきました。鋼鉄の容器による人工のバリアと岩盤という天然のバリア。この2つのバリアによって、10万年の安全を確保しようというのです。ところが、東日本大震災後、「日本学術会議」は地層処分を行うのは地震の多い日本では困難だと結論づけました。

日本学術会議は、地層処分の白紙撤回を提言。

日本学術会議は、現代の科学では、地震国日本で安定した地層を見つけるのは、非常に危険な賭けみたいなもので、困難であると、地層処分を白紙撤回すべきだと提言しました。第2次(1999年)の取りまとめの段階では、日本列島の活断層は、ほとんどが調べ尽くされ、地震が発生しない土地が広大にあり、10万年の保管に耐える土地が沢山あるという見解でしたが、神戸大学 石橋克彦名誉教授の研究により、2000年に発生した「鳥取県西部大地震」は、活断層のノーマークの土地で、マグニチュード7.3の大地震が発生しており、このように活断層が記録されていない土地でも大地震が起こることが認識されると共に、東日本大震災から1ヶ月後に福島県いわき市で起きた震度6弱の地震では、地震による地下水の変動で住宅街の真ん中に、毎秒4リットルの大量の地下水が湧き出て、止まらなくなったのです。
「活断層がずれたことによって地下水の道に大きな力が加わり水を地表まで一気に押し上げたと考えられています。大きな地震が起きると岩盤という天然のバリアが機能しなくなる可能性があります。」と石橋克彦名誉教授は指摘しています。

■表1 放射性廃棄物の種類と処分方法(旧案)

  廃棄物の例 処分の例
高レベル放射性廃棄物 使用済み核燃料から出る廃液 ガラスで固めて300m以上深くに埋める
低レベル放射性廃棄物 L1 原子炉内の部品 50m以上深くに埋設し構造物で覆う
L2 フィルター消耗品 地下10~20mに埋設し構造物で覆う
L3 コンクリート金属 浅い地下にそのまま埋設

地層処分からカナダ方式の暫定保管という考え方。

地層処分と言う国の方針は「鋼鉄の容器の腐食で、汚染物質が地下水に流れ出しても。岩盤の中の流れは緩やかなため地表に到達するには、数万年以降で、放射能は安全なレベルに下がっている。」を根拠にしてきましたが、この考え方は撤回され「日本学術会議」の提言は暫定保管に変わっています。
すぐに地層処分に踏み切らず、しばらくの間、人間の目が届く場所で管理するというカナダ方式を参考にしています。最初の60年は原発敷地内、または浅い地下の貯蔵施設で管理し、その間により安全な処分方法の開発と、その賛否などを問う国民的な議論を行おうという方向に変わっています。その後に深い地下への地層処分を行うという、方針変更があった場合に備え、200年は廃棄物を回収できるようにして置くようです。表1は、旧処分方法の概要ですが、これがどの様に変わるか注目したいものです。

原発は、寿命まで使用し延長・新設はしない選択。

原発による廃棄物の処分は、大変な問題である事をお知らせしましたが、東日本大震災の福島原発事故後のドイツのように、脱原発という選択もありますが、ドイツの場合、17基の原発の内、現在9基は稼働中です。
日本の場合は、川内の2基の原発のみが稼働している状況ですから、日本よりも多くの原発が現在も稼働中です。「原発を直ちに停止せよ。」と言う考え方もあるでしようが、私達は、深夜電力など、原発による恩恵も受け続けてきました。資源小国の日本で、原発の恩恵は計り知れないものがあります。
確かに今回の話題のように廃棄物の処理など、大きな問題もありますが、安全性を確保して耐用年数分は原発を使い続け、耐用年数後は、順次、代替エネルギーに変えていくという方法もあると思います。
太陽光発電や水素発電にシフトしていくなど、様々な方向にソフトランディングさせていくのが、最も良い方法ではないかと思います。そのために必要なのは、住宅に於けるエネルギーの削減を実現させて行くことです。地球環境を考えた場合、住宅の高性能化は益々、重要になります。松下孝建設はシンプルな住宅性能で貢献して参ります。